瀬戸内の風光明媚な港町・牛窓。古くから親しまれてきた鎮守の社・五香宮(ごこうぐう)には参拝者だけでなく、さまざまな人々が訪れる。近年は多くの野良猫たちが住み着いたことから“猫神社”とも呼ばれている。
2021年、映画作家の想田和弘とプロデューサーの柏木規与子は、27年間暮らしたニューヨークを離れ、『牡蠣工場』(15)や『港町』(18)を撮ったこの牛窓に移住した。新入りの住民である夫婦の生活は、瀬戸内の海のように穏やかに凪ぎ、時に大小の波が立つ。猫好きのふたりは、地域が抱える猫の糞尿被害やTNR活動、さらには超高齢化といった現実に住民として関わっていくことになる。
伝統的なコミュニティとその中心にある五香宮にカメラを向ける想田は「映画監督になった理由」を問われ、「これ映画になるの?」と突っ込まれる。そんなやりとりの愛おしさ、想田流“参与観察”ならではのハプニング。小さな対立と不意に展開する幸福な偶然。四季折々の美しい自然のなか、生きとし生けるものが織りなす限りなく豊かな光景。それは愉快で厳しく、シンプルで複雑な世界の見取り図でもある。
『精神0』から4年、記念すべき観察映画第10弾となる本作は、ベルリン国際映画祭をはじめとして、世界各国の映画祭でSOLD OUTが続出し、熱狂の拍手で迎えられた。これは、作家自身の物語であり、他者との共存を想うあなたの物語。
映画作家。1970年栃木県足利市生まれ。東京大学文学部宗教学・宗教史学科卒。スクール・オブ・ビジュアルアーツ映画学科卒。事前のリサーチや台本、ナレーションやBGMを排した「観察映画」の方法とスタイルで、これまでに11本の長編ドキュメンタリー映画を発表。2008年に『選挙』が米国のピーボディ賞を、『精神』が釜山国際映画祭とドバイ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を、『Peace』が香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を、『精神0』がベルリン国際映画祭でエキュメニカル審査員賞、ナント三大陸映画祭でグランプリを受賞するなど、国際的に高い評価を受けている。フランス、ポーランド、韓国、イタリア、ベルギー、カナダ、中国、香港、台湾など、世界各地でレトロスペクティブ特集上映が組まれている。これまでに『観察する男』(ミシマ社)、『The Big House アメリカを撮る』(岩波書店)、『なぜ僕は瞑想するのか』(ホーム社/集英社)など9冊の単著を出版。そのうちの『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』(講談社現代新書)は英語、中国語、韓国語に訳されている。2021年、27年間住んだニューヨークを離れ、妻・柏木規与子とともに牛窓に移住。最新刊、フォトエッセイ集『猫様』(発行:ホーム社/発売:集英社)が10月18日刊行予定。
岡山県岡山市で生まれ育つ。夫・想田和弘の観察映画のうち10本を製作してきたが、本業は太極拳師範、ダンサー・振付家。世界的な伝統楊式太極拳マスター William C. C. Chen(陳至誠)老師に師事し、ニューヨーク市立大学演劇学科等で太極拳を教えた。2020年に陳老師より伝統楊式太極拳マスター認定を受け、2021年、27年間住んだニューヨークを離れ、想田とともに帰国。同年12月から岡山県瀬戸内市牛窓で太極拳道場「樂心舎」を開設する。『牡蠣工場』(15)、『港町』(18)、『五香宮の猫』(24)の舞台となった牛窓は、柏木の母の故郷である。
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
北海道 | シアターキノ | 011-231-9355 | 上映終了 ★好評につき上映延長★10月26日(土)〜11月8日(金) |
備考: | |||
宮城県 | フォーラム仙台 | 022-728-7866 | 11月15日(金)より公開中 |
備考: | |||
山形県 | フォーラム山形 | 023-632-3220 | 12月6日(金)~ |
備考: | |||
福島県 | フォーラム福島 | 024-533-1515 | 12月6日(金)~ |
備考: |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
東京都 | シアター・イメージフォーラム | 03-5766-0114 | 10月19日(土)~11月29日(金)まで |
★10月19日(土) 10:50の回、13:30の回 各回上映後、想田和弘監督・柏木規与子プロデューサーによる舞台挨拶 ●11/2(土)~11/15(金) 12:40(日本語字幕付き)/13:30/16:00/18:30(英語字幕付き/with English subtitles) |
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神奈川県 | 横浜シネマ・ジャック&ベティ | 045-243-9800 | 上映終了 10月19日(土)~11月15日(金) |
★10月19日(土) 16:10の回上映後、想田和弘監督・柏木規与子プロデューサーによる舞台挨拶 ◆バリアフリー日本語字幕版上映 10/20(日) 12:00の回、10/25(金) 16:10の回、10/26(土) 14:50の回、11/4(月祝) 11:35の回 ◆英語字幕版上映(with English subtitles)10/20(日) 16:10の回、10/25(金) 12:00の回、10/29(火) 14:50の回、11/2(土) 11:35の回 |
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神奈川県 | あつぎのえいがかんkiki | 046-240-0600 | 11月15日(金)~11月28日(木) |
備考: | |||
埼玉県 | 深谷シネマ | 048-551-4592 | 上映終了 10月27日(日)~11月9日(土) |
備考:火曜定休 | |||
千葉県 | キネマ旬報シアター | 04-7141-7238 | 上映終了 10月26日(土)~11月15日(金) |
備考: | |||
群馬県 | シネマテークたかさき | 027-325-1744 | 11月22日(金)~12月5日(木) |
備考 | |||
栃木県 | 宇都宮ヒカリ座 | 028-633-4445 | 25年1月10日(金)~1月23日(木) |
備考: | |||
茨城県 | あまや座 | 029-212-7531 | 12月7日(土)~12月13日(金) |
備考:水曜定休 |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
愛知県 | ナゴヤキネマ・ノイ | 052-734-7467 | 上映終了 10月26日(土)〜11月15日(金) |
備考:火曜定休 ★10月27日(日) 13:00の回 各回上映後、想田和弘監督による舞台挨拶 |
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静岡県 | 静岡シネ・ギャラリー | 054-250-0283 | 11月22日(金)〜12月5日(木) |
備考 | |||
長野県 | 長野相生座・ロキシー | 026-232-3016 | 25年1月10日(金)〜1月23日(木) |
備考: | |||
石川県 | シネモンド | 076-220-5007 | 11月9日(土)〜11月22日(金) |
備考: |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
大阪府 | 第七藝術劇場 | 06-6302-2073 | 上映終了 10月19日(土)~11月15日(金) |
★10月20日(日)14:15の回上映後、想田和弘監督・柏木規与子プロデューサーによる舞台挨拶◆バリアフリー日本語字幕版上映 10/28(月) 11:00の回、10/31(木) 11:00の回、11/4(月祝) 13:05の回、11/7(木) 13:05の回 | |||
京都府 | 京都シネマ | 075-353-4723 | 上映終了 10月19日(土)~11月7日(木) |
★10月20日(日)10:00の回上映後、想田和弘監督・柏木規与子プロデューサーによる舞台挨拶 | |||
兵庫県 | 元町映画館 | 078-366-2636 | 上映終了 10月26日(土)〜11月8日(金) |
★11月4日(月・祝)13:20の回上映後、想田和弘監督による舞台挨拶 |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
岡山県 | シネマ・クレール | 086-231-0019 | 上映終了 10月25日(金)~11月14日(木) |
★10月26日(土) 9:50の回、14:50の回 各回上映後、想田和弘監督・柏木規与子プロデューサーによる舞台挨拶 | |||
広島県 | 横川シネマ | 082-231-1001 | 11月2日(土)~11月22日(金) |
★11月3日(日) 12:40の回上映後、想田和弘監督による舞台挨拶 ◆バリアフリー日本語字幕版上映 11/9(土)〜11/15(金) 10:20の回 | |||
広島県 | シネマ尾道 | 0848-24-8222 | 11月30日(土)〜12月13日(金) |
★11月30日(土) 11:15の回上映後、想田和弘監督による舞台挨拶 ◆バリアフリー日本語字幕版上映 12/7(土)〜12/13(金) 15:00の回 |
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愛媛県 | シネマルナティック | 089-933-9240 | 11月9日(土)~11月15日(金) 【追加上映】11月23日(土)〜29日(金) |
備考:火曜定休 ★11月9日(土) 10:10の回上映後、想田和弘監督による舞台挨拶 |
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香川県 | ソレイユ・2 | 087-861-3302 | 上映終了 11月8日(金)~11月14日(木) |
★11月10日(日) 9:30の回上映後、想田和弘監督による舞台挨拶 |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
福岡県 | KBCシネマ1・2 | 092-751-4268 | 上映終了 11月1日(金)〜11月14日(木)※11月8日(金)休映 |
★11月2日(土)14:10の回上映後:想田和弘監督による舞台挨拶 | |||
福岡県 | 大川シネマホール | 0944-85-8002 | 12月13日(金)〜12月19日(木) ※12月17日(火)休映 |
備考 | |||
大分県 | シネマ5 | 097-536-4512 | 11月23日(土)〜11月29日(金) |
備考 | |||
熊本県 | Denkikan | 096-352-2121 | 11月22日(金)〜11月28日(木) |
備考: | |||
宮崎県 | 宮崎キネマ館 | 0985-28-1162 | 25年1月3日(金)~1月9日(木) |
備考: | |||
佐賀県 | シアター・シエマ | 0952-27-5116 | 12月13日(金)〜12月19日(木) |
備考: | |||
鹿児島県 | ガーデンズシネマ | 099-222-8746 | 上映終了 10月30日(水)~11月1日(金) |
備考 | |||
沖縄県 | 桜坂劇場 | 098-860-9555 | 11月23日(土)〜 |
備考: |
コメント
のどかな晴れの国の景色と、草花と生き物を神と共に守るお年寄り、こどもたちと旅人たち。誰のものでもない猫たちが刺繍糸のようにそれぞれの関係をステッチして海辺の町の中をキルトのように繋げていく。正解がない課題でも話し合い続ける場を設けられる豊かさに小さな政治の希望と温もりを感じて心に温かい光を灯してもらえたようです。
ほしよりこ(漫画家)
ひとの暮らしに猫がいる。
猫がいるからひとが来る。
排除とか共存とかの一線を決めないところに平和があるのかなあ。
嵐の日でも猫が腹をだして眠るのはひとの傍らなんだなあ。
小林聡美(俳優)
今、この社会の喜怒哀楽はゴツゴツしているけれど、
この作品の喜怒哀楽はなぜか柔らかい。なんでだろう。
武田砂鉄(ライター)
共生は、容易いものではない。子どもも、大人も、住民も、旅人も、参拝者も、ドキュメンタリー作家も、それぞれの思いで境内に集い、小さな命と向き合う。そのプロセスが「猫視点」で見えてくる、肉球のようにやわらかな町の記録。
小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)
小さな港町の再現しえない一回性の出来事。そこには、ネット上を飛び交う、文脈から切り離された「情報」とは異なる、地に足の着いた人びとの「知恵」が映り込んでいる。
松村圭一郎(文化人類学者)
神社という場で、猫を媒介に、ひとと動物、植物が織りなす小宇宙が広がっていく。
提起されるのは「自分たち」の境界線をどこに引くのかという問いだ。「自分たち」とは集落の人間か、外の人間も含めるのか。わかりあえない人間はどうするのか。人間だけでなく動物も含めるのか。
映画はやがて、他者と棲み分けるのではなく、ともに「棲みあう」地平とはどのようなものなのか、という新たな問いを拓いていく。
森千香子(同志社大学教授/社会学者)
時に厄介者扱いされたり、癒しを求められたり、観光客の呼び込みを期待されたり、そして、捨てられたり――高齢化する小さな集落の猫たちの姿を追うほどに、こんなにも重層的な社会が見えてくるなんて。
安田菜津紀(メディアNPO Dialogue for People(D4P)副代表/フォトジャーナリスト)
どうして想田さんは「猫の映画」なんか撮るんだろうと不思議に思っていたけれど、これは最初から最後まで非情なまでに「人間についての映画」だった。猫が目の前にいる人間の本性を容赦なく映し出してしまうとはこの映画を観るまで知らなかった。
内田樹(思想家、武道家)
長い年月、この石段を登り降りしてきた人々。
その足元を、猫たちがするすると行き交い、人々を繋いでいる。
人間、猫、魚、植物…あらゆる生きものの命が光る瞬間がここにある。
坂本美雨(ミュージシャン)
植物、微生物、昆虫、動物、人‥‥
種も、個も、みな、体感する世界が違うので、共生ってとても難しい
でも地域でみんなで暮らすわけだから諦めるわけにはいきません
生きとし生けるものが幸せで、安らかで、自由でありますようにと願い続けて、謙虚かつ気楽に生活したいと改めて思いました
星野概念(精神科医 など)
被写体はネコたち。そして透けて見えるネコの周囲の人たち。想田も柏木もその一人。表情がないネコは人の営みのメタファー。テーマは多岐。多分観る人によって違う。つまりこの映画は、あなた自身のメタファーでもある。
森達也(映画監督、作家)
想田は、世界から消えつつあるものを映し出す。それは神聖な場所であると同時に、日常生活の場でもある。愛くるしい猫たちの背後に映し出されたのは、季節や日々の生活、生や死、そして、うたた寝のサイクルである。
Le Polyester
想田の控え目で愛らしい映画は、自由な猫たちと優しい人々に対する、豪華な贈り物である。
Little White Lies
想田は自身の「観察映画の十戒」に忠実で、いつもの道具を使う。その結果、彼の映画は一貫性と反復に価値があることを証明してみせる。オルタナティブなビジョンを作り上げるのではなく、想田は思慮深く、慈愛に満ちた、誰もが再現することのできる世界の見方を示すのだ。
SCREEN SLATE